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研究分野の紹介

                                                

◆ 無線通信用RF-LSI
  無線通信用トランシーバ回路は下図のように、受信系、送信系、局発系の3つのパートにより構成されています。かつては、これらの3っつのパート、さらにはその中にある一つ一つの回路ブロックが、それぞれの一つ一つの集積回路で構成されていました。
  1990年代以降、携帯電話、WLAN、Bluetooth、ETCなど、我々の身の回りに数多くの無線通信機器が存在するようになるにつれ、無線通信用トランシーバを一つの集積回路上に搭載する技術が進んできました。その中でもCMOSを用いた無線通信用トランシーバは、2000年以降数多く開発されてきました。

  CMOSプロセスは、元来、ディジタル回路に用いられるスィッチング素子として活用されてきました。しかしながら、近年の微細化に伴い、素子の高周波特性が向上し、現在の最先端プロセスではNMOSのfT(遮断周波数)は300GHzに達します。

 我々の研究グループでは、CMOSを用いた無線通信回路の高性能化・低面積化を研究テーマとしています。

◆ 技術的課題
 ★素子の微細化によるデバイス特性の劣化に伴う回路特性の劣化
   上記のように、微細化によりMOSFETの周波数特性は向上してきましたが、劣化してしまった
  特性もあります。例えば、チャネル長が短くなった事によるMOSFETのro(出力抵抗)の低下、
  リーク電流の増大、電源電圧の低下、電源電圧が低下しているにもかかわらずそれほど低下し
  ない閾値電圧、雑音特性の劣化等があげられます(下図)。

   特に雑音特性の劣化は高周波アナログ回路においては、大きな課題となり、LNAのNFの
  悪化、VCOの位相雑音の悪化等につながります。これらを回避するための回路技術を研究し
  ます。

 ★高周波アナログ回路の省面積化
   ディジタル回路はCMOSのスケーリングにより、約3年で半分のサイズになりますが、アナログ
  回路は、それほどは小さくなりません。それは、MOSFET以外の抵抗、コンデンサ、コイル等が
  スケーリングされないためです。したがって、高周波アナログ回路の専有面積は、相対的に大き
  くなっていて、LSI全体のコストに大きな影響を与える事になります。
   近年、これらの課題を解決するために、トランシーバ回路のディジタル化が進んでいます。



    これらの技術により、トランシーバ回路の専有面積は小型化してきましたが、LNA、MIX、
   VCO、PA(DA)などの高周波アナログ回路は、ディジタル化できないため、小型化が困難です。
    高周波アナログ回路の省面積化には、単に小型化技術だけでなく、それに伴う上記のような
   雑音特性の解析等の研究が必要となります。

 ★集積化が実現できていない回路
   多くの高周波アナログ回路ブロックが集積化され、1チップになっていますが、パワーアンプ、
  高周波フィルタ、デュプレクサ、高線形性のアンテナスィッチ等の集積化は実現できていません。
  これらの集積化は今後の課題のひとつとなります。

◆ アプリケーション分野
 ★ユビキタス通信をめざした無線通信用アナログF/E回路の研究
    ☆センサネットワーク(315MHz帯、900MHz帯、2.4GHz帯)
    ☆ホームネットワーク、スマートグリッド、BAN
    ☆4G以降に想定される無線通信用アナログF/E回路の研究
 
★THz無線トランシーバ(300GHz〜)の基礎回路の研究
    ☆大容量無線通信応用、イメージング応用
    ☆デバイス性能を超える高周波回路の検討
 
★次世代高bit-rate変調方式を実現するアナログF/E回路の研究