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2-2. インダクタの低寄生抵抗化 高周波領域では電流は金属配線全体を流れずにその周辺部分に偏在する(表皮効果)。したがって、寄生抵抗が非常に高くなる。
そこで我々は2Dおよび3D的にメタル分割を行い、周辺長を長くしたStriped Inductorの研究を行っている。

2-3. 2D-Striped Inductorによる低寄生抵抗化 2D-Striped
Inductorのコンセプトは、インダクタ配線の周辺長を長くすることにより寄生抵抗を低下させることである。左上図のように、通常構造の寄生抵抗とStriped構造の寄生抵抗は計算され、右上図のレイアウトとすると約4
dB位相雑音の低下が期待できる。電磁界シミュレーションを用いて寄生抵抗の差をプロットしたのが左下図であり、7〜8GHzからStriped構造の優位性が確認でき、インダクタ単体の測定値から求めたコーナー周波数(表皮効果が顕在化する周波数)は通常構造と比較して、高周波化していることが判る。

H. Tsuji, Y. Itano, K. Komoku, T. Morishita, S.
Yoshitomi, and N. Itoh, "Millimeter-Wave VCO using Striped Inductor," Proc.
of Asia-Pacific Microwave Conference (APMC2014) 2014, pp. 959-961, Sendai,
Nov. 2014.

N. Itoh, H. Tsuji, Y. Itano, T. Morishita, K. Komoku, and
S. Yoshitomi, “A Study of Striped Inductor for K-
and Ka-band Voltage-controlled Oscillators,” IEICE
Transaction on Electronics, Vol.E99-C, No.6, pp.614-622, Jun. 2016, DOI:
10.1587/transele.E99.C.614.
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2-5. 3D-Striped InductorによるVCOの低位相雑音化 2D-Striped
Inductorのコンセプトをさらに拡張して3D-Striped
Inductorを検討した。ここでは、厚膜メタル1層を用いた通常構造のインダクタと、薄膜メタル4層を用いた3D-Striped
Inductorとの比較をおこなった。結果は下記の様に、薄膜メタル4層を用いた3D-Striped
Inductorを用いたVCOは通常構造のインダクタを用いたVCOに対して、ほぼ同じ位相雑音を約20%程度の電流増加で達成することができた。

Y. Sakamoto, K. Komoku, T. Morishita, N. Itoh, “24
GHz Low-Phase-Noise VCO Using 3D-Striped Inductor Utilized Thin-Metal
Layers,” Proc. of the 2017 Asia-Pacific Microwave
Conference, TH3-E, Kuala Lumpur, Nov. 2017.
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2-6. 3D-Striped Inductorの最適化 3D-Striped
Inductorでは、近接するメタルストライプが多いため、表皮効果とともに近接効果についても考慮する必要がある。ここで、全体のメタル幅が9umで一定のもと、M5のストライプ幅を一定としてM4〜M2のストライプ幅を横軸に、寄生抵抗を縦軸にプロットする(左下図)と、寄生抵抗値はある幅で極小値をとることが判る。また、設計・試作したVCOの1MHz離調における位相雑音が−100dBc/Hzに達する電流も同じ傾向となる(右下図)。これらの結果から、横軸の左側(ストライプ幅が狭い)では相対的にスペースの下図が多いので近接効果が支配的となり、右側では表皮効果が支配的になることがわかる。

これらの結果から、薄膜配線のみを用いたインダクタ(ディジタルプロセスでは厚膜配線は不要!)では、ストライプとしないで何層かスタックした通常構造インダクタより、最適なストライプ構造とすることにより、寄生抵抗が低減され位相雑音特性が向上すると考えられる。そこで、下図のような構造のVCOを比較した場合、3D-Striped構造の方が約2dB位相雑音の改善が確認できた。

坂本 裕太,小椋 清孝,森下 賢幸,伊藤 信之,”3次元ストライプドインダクタの最適化による低位相雑音電圧制御発振器の検討,”
電子情報通信学会論文誌C,Vol.J103-C,No.1,pp.xxx-xxx,Jan.
2020.(採録決定)
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3. ローコストプロセスを用いた高周波増幅器
高周波増幅器を実現するには、通常
fTの高いトランジスタを用いる必要があり、一般には動作周波数の10倍の
fTが必要と言われている。しかしながら、例えば24GHzの増幅器を実現しようとすると、fT=240GHzが必要となり、これはCMOSのプロセスで言うと40nmプロセス程度となりコストがかかる。そこで、180nm程度のプロセスで24GHzの増幅器が実現できないかの検討を行っている。

Y. Sato, K. Komoku, T. Morishita, N. Itoh, “A
24-GHz Low-Noise Amplifier using Three-Port Inductor,”
The 19th International Conference on Analog VLSI Circuits (AVIC2016),
pp.103-106, Boston, Aug. 2016.